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車窓が雨で濡れ、くぐもった雨音だけが
車内に響く。
彼と電話で話すと、口論になるのは前から気付いていた。
私はぽつりぽつりと時間をかけ話すのが好きだ。
彼は要点を言うとすぐ電話を切る。
電話自体が性に合わないのだろう。
互いの縮めようのない距離に、私は溜息をつく以外出来なかった。

彼は、私が機嫌良くしていると心の底から安心したように微笑む。ただ一つ、何時その糸が切れるのかを彼は怯えているようだった。
毎日私は大事に大事にその糸を紡ぐ。
解けないように、絡まないように。
ある日、ふとした事で糸がほつれる。
慌てて直す。まだ大丈夫だと。
しかしほつれは大きくなり、収集がつかなくなる。直せない。
その時、私の頭はぼんっという音を立て、崩れる。
そして、最後は鋏を手に持つ。

そうか、私はいつも私自身で終わりにしてきたんだ。
じゃあ、私が言わないと。
私は携帯に手を伸ばし、彼の連絡先を検索した。
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公開:20/03/01 18:36

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