画期的なスピーカー

とある会社から、画期的なスピーカーが発売された。好きな曲を、自分の好きな歌手の声で聴けるというものだ。もちろん世界中で大ブーム。
声自体は別売ハードウェアに接続をし、ウェブ上からダウンロードをする。
当社はまた、このスピーカーに使用できる曲をCDからのみに限定した。
その結果、これまで縮小の一歩を辿っていたCD市場は、驚異的な盛り返しに成功した。
それだけでなく、従来よりも各アーティストや作曲家への関心が高まり、再び音楽業界自体が大きく賑わうこととなった。

しかし一方で文化の消滅も起きていた。曲のカバーだ。各個人が好きな歌手に好きな曲を歌わせることができるようになった結果、需要が減るのは必然だった。

そんなある日、殺人事件が起きた。理由はこのスピーカー。ある曲を巡ってどの歌手の声で聴くかという言い争いの末、妻が夫を刺殺したのだ。
この一件で、すぐさまスピーカーの販売は中止になった。