少しはずれている鶯

2月の終わり、犬と散歩をしていた時に遠くから「ホーホケッ...ケキョ」と少しはずれた鳴き声がした。鶯だ。春の足音に嬉しくなりながら耳を澄ませる。「ホー…ホケッキョ」鳴いても鳴いても、一向に上手くならない鶯に少しイラっとした僕は「ホーホケキョッ♪」と口笛を吹いた。このまだ幼い鶯に、"こうやって鳴くんだよ"っと教えるように美しく得意の口笛を吹く。しかし、しばらく沈黙が続いた。諦めてどこかに行ってしまったのか？と思ったその時「ホーホケキョッ♪」と完璧な鳴き声がした。
お前すごいぞ！やれば出来るじゃないか！と嬉しくなりながら小道を下る。「ホーホケキョッ♪」何度も美しく鳴く鶯。いいぞ、その調子だ、きっと素敵な伴侶が見つかるぞ！と思いながら意気揚々と歩く僕。少しずつその美しい声は近づいているように思えた。小道を下り終えて、ふと振り返ると後ろのおじさんの唇から「ホーホケキョッ」と美しい音が響いていた。