叔母さんと弟

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叔母さんが亡くなった。
病弱の両親に代わり俺が通夜に出ないといけない。
そんな時に5歳の息子がインフルエンザにかかった。
嫁は仕事だ。俺が病院に連れて行くしかない。

通夜はどうする。誰かが行かねば親の顔を立てられない。
俺は弟に電話した。時計は午後の3時だった。
「急で悪いが頼む!6時までに葬儀場に行ってくれ!」
「……今からじゃ難しいかも。今の仕事を終わらせたらすぐ向かうよ」
「家の代表として出れるのは俺とお前しかいないんだぞ!こんな時に仕事なんて!」
「……努力はするよ」

その夜、弟は何とか定刻に間に合い通夜に出席できていた。
俺は胸をなでおろした。

翌日の葬儀は俺と弟で出席した。
俺はなぜか不思議なくらい涙が出なかった。
出棺の時、ふっと、叔母さんがよく言っていた言葉を思い出した。
"どんな時でも、今この瞬間を、真剣に生きなさい"

弟に目をやると、他の誰よりも大泣きしていた。
その他
公開:20/03/02 12:44
更新:20/03/08 07:55
兄弟

こぶし( 宮城県 )

さすらいの創作人。
作るお話はすべてフィクションです。本人はそう言い張ってます。

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