冷凍色品の乱

冷凍庫にストックしてあった虹が、夕方帰宅すると消えていた。
犯人は判っている。居間から大音量のＴＶと馬鹿笑い。流しに放置された袋。ぎざぎざに切れた縁に、うっすら涙をこぼす緑。
私は特売の『藍の素冷凍空揚げ』をパレットに乗せ、ナイフで寸刻みした。雲に刃が当たる度、はがれた雷粉がパリパリ弾ける。これが本当の霜降りね、ざまあ見ろ。白っぽくなった細切れの空をわさっと皿に盛り、電飾レンジでチン。アツアツの夕焼けが出来上がったところで、いざ居間へ。
鈍ギョーザと桜春巻きをつまみに、こちらも出来上がった旦那。グラスの黄麟ビールに汚染された虹。ニジレイ『天然レインボー・ロックアイス』の芸術的な七色が、融けて混ざって、アルコールまみれの白虹に……！
許せん。透明なペリ絵に踊る虹泡を楽しむ、私の夢のひと時を台無しにしおって。
私はサングラスをしたまま、後ろ手の夕焼けをテーブルにドン！
居間は真っ赤に染まった。