カラスと影

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灰色の街の中、カラスがカア、と鳴いた。
その一羽は、とまっていた電線から飛び立って、ふわりと膨らんでから急降下した。
うわ、危ない!
そう思ったのも束の間、全速力で地面にぶつかる。
パチン!
何かが爆ぜるような音が響く。見ると、たった今カラスがぶつかった部分が黒く、丸く染まっている。蠢いている。時折、その形をぐにゃりと変えながら。

その上を人が通る。すると今度はその影に黒い円が吸い寄せられる。
周囲の人たちに不審がられないように気を付けながら、そのあとを追いかける。
ばさ、ぴたん。ばさ、ぴたん。
今度は人の影から影へと飛び移り始めた。イルカが軽やかに泳ぐように。
しばらく追いかけていると、一人の青年の影の元に辿り着いた。青年の影が一際大きく動いたかと思うと、彼の肩にはいつの間にか一羽のカラスがとまっていた。
カア。
カラスの声と同時に振り返った青年は、にこりと笑って街の中に消えた。
その他
公開:20/02/29 12:20

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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