川に映っている橋はなんで流れていかないのかな？

　小学校１年生の課外授業。春の小川で子供たちが何かしゃべっている。
「川に映ってる橋は、なんで流れないの？」
　かわいい質問だ。僕は耳をそばだてた。
「水は流れてるんだから、映した水だって流れていくでしょ？」
「そうだね。写像っていうのは橋を映した光の粒子が水面に触れた結果結ばれているわけだから、流れないとヘンだ」
「でも、問題は川の方なんじゃない？　だってまず川に光が反射してから、橋が映るんでしょ？」
「でも、それだと川に反射した瞬間にそれはもう流れてしまっているから、そこに橋はない。川に映らないことになる」
「橋が在り、水に映る、という現象そのものが刷り込みなんじゃない？　本当は何も映ってないんじゃ……」
「水はさ、カメレオンみたいに、上にあるものの色になるんだよ。だから橋の下でだけ橋が映ってるみたいに見える！」
「分子と捕らえればね、たしかに……」

　かわいいどころでは、なかった。