Awkwardness

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1冊丸々本を読み終え、かすかな充実感を胸にカフェを出る。
店の外でズボンの裾を屈んで直し顔を上げると、見知った姿が信号待ちをしていた。
どこかのセミナーで隣同士になったか。
会話の調子が合わず途中からは一切話さなくなったっけ。
いつのセミナーだったか頭をこらしていると、彼がふと後ろを振り返り、こちらの顔を二度見する。しまった。
向こうの顔はぱあっと明るくなり、挨拶し
ながら駆け寄ってくる。
きた。
彼の異様に嬉しそうな雰囲気に少々圧倒されつつ、近くで本を読んでいた事を伝える。
そこから話が始まってしまい、あのぎこちない感情が蘇る。これだ、この感じ。
焦ら立つ気持ちを抑えながら、簡潔に行かなければならない事を伝える。
そして最後の連絡先交換。
何故このぎこちなさがわからんのだ、君。
彼が自転車で颯爽と去って行く姿を目の端で追いながら、自分も急がなければと歩を進める。
その他
公開:20/03/01 10:21

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