笑いの代弁者

「草生える」
面白いこと、笑いが起きるときに使われるネット上で生まれた表現がある。
だが、私の街には本当に「草生える」場所がある。

「あの、本を返しに来ました」
受付から声がする。いつもの日常だ。
週に何度も訪れる私にとっては静かで心地よい場所である。
「お、今日も生え始めたか！」
小説棚の下から草が生えるのを見つつ、他の棚の生え具合も確認する。
この草は、ここにいる人達のいわゆる、笑いの代弁者だ。

しばらくすると、
「おや？いつもより早いな」
小説棚を見ると、他の棚より生える早さが異常だ。
「今日は新刊本の入荷日だった！まずい、このままでは皆が腹筋崩壊してしまう！
　草刈機では間に合わない！芝刈機で一掃だ！」

静かに笑顔になれるこの場所を守りたいから今の仕事を続けられる。
「今日もいい仕事したー！」
頭の中で笑いながら足元に生えた一本の草を見つめた。