ひと冬の恋
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ひとめぼれだった。
降りしきる雪の中、ひとり佇(たたず)んで、目を輝かせながら柊の白い花を見上げるその女の姿に。
「うちに来ないか?」
遠巻きに声をかけてみる。
「ええ、かまわないけど、あなた、これが怖くないの?」
女が笑顔で振り向きながら柊を指差す。
「ああ。でもそれ以上にあんたの魅力にひかれてしまった」
とげのある葉はたしかに嫌な感じだが、ただよう甘い香りと女の笑顔に逆らうことができなかった。
「ふふっ」と笑う女の虜(とりこ)になり、いっしょに暮らすことになった。
しかし、幸せな時は長くは続かなかった。年が明け雪解けの季節がやってきた頃、女はこう切り出した。
「いろいろと楽しかった。でももう行かなきゃ。雪がなくなっちゃうから」
出会いは突然だったが、別れもそうだった。
「また会えるかな?」
「次に柊の花が咲いたらね」
淡い期待を残し、女は忽然と姿を消した。
降りしきる雪の中、ひとり佇(たたず)んで、目を輝かせながら柊の白い花を見上げるその女の姿に。
「うちに来ないか?」
遠巻きに声をかけてみる。
「ええ、かまわないけど、あなた、これが怖くないの?」
女が笑顔で振り向きながら柊を指差す。
「ああ。でもそれ以上にあんたの魅力にひかれてしまった」
とげのある葉はたしかに嫌な感じだが、ただよう甘い香りと女の笑顔に逆らうことができなかった。
「ふふっ」と笑う女の虜(とりこ)になり、いっしょに暮らすことになった。
しかし、幸せな時は長くは続かなかった。年が明け雪解けの季節がやってきた頃、女はこう切り出した。
「いろいろと楽しかった。でももう行かなきゃ。雪がなくなっちゃうから」
出会いは突然だったが、別れもそうだった。
「また会えるかな?」
「次に柊の花が咲いたらね」
淡い期待を残し、女は忽然と姿を消した。
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公開:20/02/29 07:00
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オオカミの自信作
武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。
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