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ひとめぼれだった。

降りしきる雪の中、ひとり佇(たたず)んで、目を輝かせながら柊の白い花を見上げるその女の姿に。

「うちに来ないか?」

遠巻きに声をかけてみる。

「ええ、かまわないけど、あなた、これが怖くないの?」

女が笑顔で振り向きながら柊を指差す。

「ああ。でもそれ以上にあんたの魅力にひかれてしまった」

とげのある葉はたしかに嫌な感じだが、ただよう甘い香りと女の笑顔に逆らうことができなかった。

「ふふっ」と笑う女の虜(とりこ)になり、いっしょに暮らすことになった。

しかし、幸せな時は長くは続かなかった。年が明け雪解けの季節がやってきた頃、女はこう切り出した。

「いろいろと楽しかった。でももう行かなきゃ。雪がなくなっちゃうから」

出会いは突然だったが、別れもそうだった。

「また会えるかな?」

「次に柊の花が咲いたらね」

淡い期待を残し、女は忽然と姿を消した。
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公開:20/02/29 07:00
316 女は雪女 男は鬼 在来種の柊は冬に花が咲く 柊の葉は節分の魔除け 柊の花は金木犀のような香り オオカミの自信作

武蔵の国のオオカミ( ここ、ツイッタランド、タイッツー )

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