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 ビニール傘ではなく、柄のある傘を使う女性と付き合ったのは、初めてのことだった。初体験。雨の日、彼女が傘を開く姿を見た時、僕の視界は晴れた。その傘が目立ち過ぎず、景色に溶け込むようなグレーの色を基調としていたことも、僕は気に入った。僕が自分の持っていたビニール傘を開く事を躊躇っていると、彼女は鞄から折り畳み傘を出し、僕に渡してくれた。開いてみると、黒色の上に鮮やかな花が散りばめられた、柄のある傘だった。僕と彼女は雨の中を歩き始めた。折り畳み傘を握る右手は、自分の手ではないような感覚だった。左手には僕の持っていたビニール傘があった。僕が両手に傘を持って歩いたことは、この一度きりしかない。
青春
公開:20/02/29 09:48
日常

杉将

基本的に、無、です。

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