見返り

深夜、いつもコンビニに行く。目的は買い物ではない。毎日午前三時ちょうどに店に流れるBGMを記録する。部屋に帰って曲の歌詞を調べてテキスト入力し、所定のアルゴリズムでデータ処理して本部に送る。何のためにやるのか知らないが、俺の毎夜の仕事、どこかの企業がやらないかと言ってきたアルバイトだ。半年前に企業の採用試験を全部落とされたのだ。深夜にしてはバイト代イマイチの単純作業だが、とにかく続けている。その代わりに、この作業で曲の歌詞に興味が湧いてきた。ありきたりではなく俺の好きなコトバを並べてみたらいくつか歌詞ができた。最近はSNSに投稿をはじめた。作詞家になれるかも。

その頃、某企業人材採用室で、
「室長、この37番、タスク継続三カ月です。採用面談時期では？」
「意味不明な単純作業に耐えられるかのテスト生だな。で、SNSチェックは？」
「あ、クリエイティブをやりだしています」
「ボツ、だな」