伝説の銀のカタツムリ⑦

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「え⁈ 返さなくていいってどういう事ですか⁈」
 今田さんは握っていたカツラをバッグにしまう。
「大丈夫。僕を、いや、近藤さんを信じてください。今月の湯〜とぴあ新聞の差替えは間に合いますか?」
「はい」
 今度はカツラの入ったバッグをしっかり握りしめ頷いた。

 俺の推理はこうだ。
 近藤さんは5年前からここに通っている。2年前に中学の同級生だった(もしかしたら想いを寄せていた)今田さんを受付で見つけた。30年ぶりの再会だが湯〜とぴあ新聞の新入社員紹介で本人だと確信する。
 それから彼は嬉しくて頻回に通うようになるが1年経っても今田さんは彼に気付かない。薄毛で人相が変わったせいだと悟り、名乗り出られなくなった彼はカツラを着けた。そのおかげで今田さんは初めて近藤さんに気付く。
 今田さんと話す時間。ここは彼にとって正にユートピア(理想郷)だった。
 でも、それは今田さんにとっても同じだった。
ミステリー・推理
公開:20/03/01 15:00
更新:20/05/23 11:31
立中森一(たてなかしんいち) 推理物シリーズ

NORIHISA( 碧の星 )

   創作活動はこちらのショートショートガーデンが初めてです。令和元年12月31日から投稿開始しております。
 勉強になりますので、どのようなことでもお気軽にコメントいただけると嬉しいです。厳しいご意見もお待ちしております。
 どうかよろしくお願いいたします。

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