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漂白された美しい悪夢を観ている。
昼寝から覚めた後、私は唐突に思ったのだった。
頭上には、昔植えた桜が凍結した気管支の様な枝を広げ、風景は病的なまでに輝いていた。意識に上らなかった幾重もの線が影が色が、気が付けばどれ程身の周りにある事か。こんな時だというのに、私はいたく感動したのだ。
枝を縁取った白が、目に入る全てを埋めていく。あたかも閉じられた箱庭の様に。ふわり掌へ受け、構造を眺める。体温では融けないな。当たり前の事が新鮮に面白く、――* 軽く振って、また空へ返した。
防除も出来ず、可視化する試みに意味があったのか?温度の無い白へ背中を投げ、私は昼寝の続きに戻った。
マスク越しの狭い空は薄黒く、雑音の酷い端末から本日の汚染指数が流れていた。
もうすぐ本当に閉じられるのだ。
この区画は正午を以て、BHR法の特別封鎖域に制定された。完全防備の軍隊が『掃除』に来る前に、最後の夢を見るとしよう。
昼寝から覚めた後、私は唐突に思ったのだった。
頭上には、昔植えた桜が凍結した気管支の様な枝を広げ、風景は病的なまでに輝いていた。意識に上らなかった幾重もの線が影が色が、気が付けばどれ程身の周りにある事か。こんな時だというのに、私はいたく感動したのだ。
枝を縁取った白が、目に入る全てを埋めていく。あたかも閉じられた箱庭の様に。ふわり掌へ受け、構造を眺める。体温では融けないな。当たり前の事が新鮮に面白く、――* 軽く振って、また空へ返した。
防除も出来ず、可視化する試みに意味があったのか?温度の無い白へ背中を投げ、私は昼寝の続きに戻った。
マスク越しの狭い空は薄黒く、雑音の酷い端末から本日の汚染指数が流れていた。
もうすぐ本当に閉じられるのだ。
この区画は正午を以て、BHR法の特別封鎖域に制定された。完全防備の軍隊が『掃除』に来る前に、最後の夢を見るとしよう。
ホラー
公開:20/02/29 00:01
更新:20/02/29 00:31
更新:20/02/29 00:31
BHR:バイオハザードルーム
汚染物質の封じ込めの為の部屋
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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