甘い街

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ケーキ屋さんで働くSさんには、大切なお仕事があってそれは売れ残ったケーキを捨てることでした。だけどいざ捨てようとすると、「やめて」とケーキさんたちが見つめてくるので、Sさんは可哀そうになって、彼女たちをすっかり食べてしまうのです。それでSさんの体はどんどん大きくなって、あっという間にお相撲さんをはるかに超えてダンプカー、そのうち三階建てのお家くらいになりました。

そうしていつの間にやらゴミ箱行きのケーキが全国から届けられトレーラーの荷台からSさんに流し込まれるようになりました。Sさんはもっともっともっと大きくなってケーキ大仏という名の有名な待合わせ場所になりました。

ところがある時、大雨が降ったのです。
Sさんはどろどろ溶け出して街中に苺や生クリームやチョコレートやフルーツが溢れ街は一気に飲込まれました。

あれから数年、街はすっかり元通りですが、今でもほんのり甘い香りがするそうです。
ファンタジー
公開:20/02/26 20:53
更新:20/02/27 07:40

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