愛しみ

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どこだここは。
幾つかチューブが腕に繋がっている。 
両手、両足の感覚を確かめる。
五体満足だ。
ほっと息を抜く。

目の前のドアが開く。
あいつ、貴様。 
お前のせいで死にかけたんや。
「ああ、やっと起きた。
もう、本当に良かった。ばか。」
彼女は笑みを浮かびながら、ゆっくりと
俺の顔を撫でる。
「綺麗な顔。」
俺は、正直自分の身体も顔も嫌いだ。
だから拳を鍛えた。
誰にも文句を言われないように。
でも、彼女は俺が嫌いなパーツをいつも
愛しみ、撫でながら、いかにそれらが美しいかを懇々と説明をする。
俺はいつもそれをこそばゆく感じながら聞くのが心地良かった。

その彼女が、俺の頭を割ったんだ。
「本当に、ごめんなさい。」
謝罪する彼女の笑顔は、あまりにも優しく、全てを包み込んでくれるようだった。
彼女はまた俺の顔をゆっくりと撫でる。
俺は彼女の瞳を見つめる事しか出来なかった。
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公開:20/02/26 17:49
更新:20/02/26 21:06

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