悪魔と契約

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「今日は凄く調子が良さそうですね」
幼馴染の店主が嬉しそうに声をかけてきた。
「そうね。きっと音楽の神様が私のステージを見に来ているんでしょう」
嘘だ。今日のステージを見に来たのは神様ではない。悪魔だ。
数カ月前喉に異変を感じた私は病院で診察して貰い、喉頭がんと診断された。
切除すれば命は助かるが声は失われる。歌しか取り柄のない私にとってそれは死と同じだった。
だから私は悪魔と契約した。私の命尽き果てるまで声が出せますようにって。
成程…今日が最後のステージか。

ステージを終え、楽屋に戻ると悪魔がいた。
「契約通り、お前の魂を頂く」
悪魔は私の喉に触れると声と病気を奪った。声は私の魂だ。
『私に生き地獄を味わえって言うの?』
声無き叫びを上げる私に悪魔はニヤニヤ笑う。
楽屋がノックされ、店主が入ってきた。
「僕と結婚して下さい」
その様子を見て、悪魔は「お幸せに」と言い残して消え去った。
ファンタジー
公開:20/02/27 19:23

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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