伝説の銀のカタツムリ⑤

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 今田さんが取り出した落し物は上から前にかけて着ける部分カツラだ。
 10年通う俺には見覚えがあった。持主の顔は判る。彼も5年は通っているが、この2年程はよく見かける。更衣室で着脱してたので去年からカツラを使い始めた事も知っていた。交換用の片方だろう。彼も毎月『湯〜とぴあ新聞』を見てるが確かに載せ難い。気まずいが俺が声をかけて返せば。でも、なぜ今田さんが?
「実はこれ、私の中学時の同級生、近藤君のなんです。私の横に写ってる人です」
 携帯にはここで撮られた着用中の近藤さん。やはりこの人だ!
「私、2年前からここで働いてるんですけど1年位前にここで偶然、再開して。お互いバツイチ独身で話し易いし、ほぼ毎日来るから渡す機会はあるけど。彼、ナイーブだからカツラがバレたと知ったら、もう来てくれなくなるんじゃないかって…」頬を染め俯いた。

「出た! ロダンポーズ!」
 遠くから銀のカタツムリの声だ。
ミステリー・推理
公開:20/02/28 20:00
更新:20/05/23 11:14
立中森一(たてなかしんいち) 推理物シリーズ

NORIHISA( 碧の星 )

   創作活動はこちらのショートショートガーデンが初めてです。令和元年12月31日から投稿開始しております。
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