終わらさせないで

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自分の荒い息を抑える。
彼は頭を押さえながら、おぼつかない足元
で電信柱にうずくりまる。
被害者気取りか、こいつは。

ずるずると姿勢が崩れていく。
何時もなら激昂し詰め寄られるのに。
「ねえ、大丈夫なの。」
駆け寄ると、頭に何かが付いている。
後頭部をさすってみる。
べたり、と手が濡れる。
思わず、ひ、と声にならない叫びが出る。
そんなはずはない。
こんな柔なバッグで殴ってもどうにかならない。
どうして、
どうして

この人はこんな所で終わる人ではない。
私は悔しかっただけなの。
捨て台詞だけ残していく貴方に。
ねえ、怒ってた訳じゃないの、
悲しかっただけなの。
ねえ、起きて。
彼の胸に耳を押し当てる。
自分の嗚咽と息の荒さが煩い。
視界が歪む。

そんなつもりじゃなかったの。
来月東京行くんでしょ、久しぶりの
旅行じゃない。
起きて、お願い。

どうか貴方の人生を私に終わらさせないで。
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公開:20/02/24 20:12
更新:20/02/24 20:20

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