ねずみ書房

その書店の店員はみんなネズミだった。買いたい本をレジに持っていくと、レジ係りのネズミは素早く前足でレジを打って本を袋にいれ、出したお金を器用に尻尾で引き取る。書棚の本をさがしたいときには、相談カウンターにたずねる。カウンターのネズミに書名とか著者名を言うと、たちどころに後ろに控えていた五匹のネズミが走りだす。それぞれの担当書棚に走っていくようだ。やがてそのうちの一匹が目当ての本をくわえて戻ってくる。分厚い本だったら二匹で運んでくる。本を買うとサービスで書店特製の栞をつけてくれる。栞は乾燥したネズミの尻尾を平たく伸ばしたものだ。買った本をよく見ると表紙の端に小さな二本の前歯の跡がついていた。