Träumerei④

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真っ白な砂の大地には草一本も生えていない。後方に白く四角い家が建ち並び、前方は砂浜。私がいるその真ん中は、三段の木製の棚が1列に家の前に並び、どの段にもところ狭しと貝殻が置かれている。小さいのも大きいのも瓶に入ったのもある。

貝殻の一つを手に取ってみる。コロンとした形、紫の波線模様が美しい。

「持ち帰りますか?」老婆の声に顔をあげる。「これだけ綺麗な貝殻、盗まれないのが嘘みたい」私が言うと、老婆は「呼ばれた方しか来れない場所ですからねえ」と答えた。確かにここには私とこの老婆しかいない。

老婆と別れ、家の1つを選んで扉を開けた。正面には丸テーブル、その上にクルミ割人形があった。私はそれに貝殻を咥えさせ割ろうとした。だけど殻は固くて人形の方が壊れてしまった。動揺した私は人形を机から叩き落とし、人形はバラバラになった。突然風が吹き、外に投げ出された。大量の貝殻が降ってきて、私は埋められた。
公開:20/02/24 10:55

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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