錦鯉

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大豪邸に住むA氏が孤独死した。妻に先立たれてからは息子夫婦と同居もせず、悠々自適に一人暮らしを満喫していたという。
資産家であるA氏は、倹約家としても知られており、かなりの財産を使わずに残したと思われていたが、遺書がなく、財産を見つけ出そうと息子夫婦ら親族が躍起になって探し始めた。
不思議なことにA氏に金融機関の口座がなく、自宅にタンス預金もしていなかったようで、財産のゆくえは一向につかめない。その後、一年の月日が経ち、とうとう財産のありかを諦めた。
大豪邸には、広大な日本庭園があり、池に赤、白、黒に混じって黄金の錦鯉が数十匹泳いでいた。この錦鯉は金糞ならぬ金粉を排出し、池の底に溜まっていた。
A氏は生前、おカネを食べて金に替える錦鯉を買い求め、数倍に資産価値を高めていたのだ。しかし、A氏の死によってことの真相は明らかにならず、大量の金粉となった財産は、池に眠るお宝となっている。
ミステリー・推理
公開:20/02/24 07:40
更新:20/02/24 07:46
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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