白梅夜船

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満開の白梅の海を泳いでいる。
香りが全身に纏い付いて、濡れた衣で闇雲にもがく様な。吸えば吸う程に窒息する発作の様な。意識の隅々まで、花弁に埋め尽くされる様な。
夜空の海を白梅が泳いでいる。
水平線も境界面も判らない。雲か波かも判らない。一体いつ落ちたんだろう、浮かんだんだろう、梅は何処から来てどの海へ流れて行くんだろう――

気が付けば、舟を漕いでいる。
浴室には彼の人の白梅香が渦巻いて、湯船の中は冷えていて、軽く袖を引いて、もう眠ってしまった事に、一拍沈んでじき安堵して。
窓を開け放てば、舞い込むのは真白い雪片で。
剃刀が天井に三日月を投げている。ぬめって滴る雫は、錆と海の香りがする。酔いに任せて寝てしまおうか。朝にはきっと、白梅は満開の緋寒桜に化けている。

さて、彼の人はどんな声を上げるだろう。
奪った男を永遠に奪い返された、その顔はどんなだろう。
答えを直接知れない事だけが残念だ。
ホラー
公開:20/02/24 00:24
白河夜船×サイコパス 舟を漕ぐ:座ったままのうたた寝

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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