なんでもないのに。

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 カーテンの外は、眩しいくらいの晴れ模様。部屋の明かりはそのまま。眼鏡をかけ、スリッパを履き、階段を下りる。
 まずは、キッチンへ。お湯を沸かすために、ケトルに水を入れ、セットする。待ち時間は洗面所で歯磨き。それと、洗顔。お湯の沸いた音がする。それを聞きつつ、スキンケアを。ざっと、髪の毛を整える。キッチンへ戻る前に、新聞を取りに外へ。
 新聞をテーブルに置いてから、お気に入りのマグカップにお湯を注ぐ。湯気が冷たい空気に触れる。そっとマグカップを運んで、テーブルへ。新聞を読みながら、白湯を飲む。段々と、からだが温まってくる。



 午前七時。二階でベットの軋む音がし、カツカツとフローリングが鳴る。少しして、階段を下りる音。リビングのドアが開き、ゴールデンレトリバーの子犬を抱きしめた彼が言う。


 「おはよう」

 この一瞬。なんでもないのに。
 いつもいつも泣きたくなる。
その他
公開:20/02/23 22:49
更新:20/03/30 00:23
私じゃない誰かの なんでもないのに 涙が出そうなくらいの 幸せを 描きたかった こんな日々に ちょっとの憧れ 65作目

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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