花粉戦争

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「この戦いが終わったら、伝えたいことがある」
対爆スーツから顔だけ出した男は、目を腫らした女の手を握ると、覚悟を決めたように呟いた。
「行かないで!外に出たらあなただって無事では済まない!爆弾の威力は年々強くなってるのよ!」
女の目からこぼれた涙を、男は優しく拭った。ついでに、自分の鼻から垂れ流れる鼻水も拭った。

西暦20XX年

とある国家の陰謀により、花粉爆弾が誕生してから3年が経った。爆弾と言ってもその性質はウイルス兵器に近い。鼻炎や目のかゆみを引きおこし、人々の気力を著しく低下させるのだ。
たかが花粉と侮ることなかれ。多くの花粉症患者の症状は悪化し、生産活動は低下。日本の経済は低迷した。

製薬会社に勤める男は、この花粉戦争を終わらせるべく、日夜特効薬の開発に取り組んでいる。男は自ら先日開発された『花粉症に効くが副作用として強い眠気を伴う薬』の実験台となり、今日も戦場へ向かう。
その他
公開:20/02/22 12:21
更新:20/02/22 13:02

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