命運尽きようとも

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悔いはない。
悔やむことでもない。
あの時の私は、間違っていなかった。
ただ天下の流れに付き従ったまでのこと。
真実はねじ曲げられ、勝者にとって都合の良い『作りモノ』が歴史を彩る――古今東西の常識だ。私はその理の一部分へ組まれたに過ぎない。
後世の人は私を『裏切り者』として罵るだろう。
一方で、私は晴れ晴れとしている。天下は間違いなく内府のものとなるが、それを確固たるものにした天下の立役者こそ、この私なのだ。
内府――腹の内を見せぬあの爺に、大きな貸しを作ってやった。これだけでも大手柄だ。冥土におわす殿下への土産話に相応しい。
痛快、愉快。力の無い私にできる最大限の侮辱を、内府の生涯に刻み込んでやったぞ。
いずれ潰されるのは解っている。私の命運は、小早川家の家督を継いだときには既に尽きていたのだ。
このうえは、徳川の世の行く末を、冥土の果てから殿下や父上たちと共に眺めて過ごそうとしよう。
その他
公開:20/02/21 21:34

加賀守 崇緒( 猫屋敷 )

気まぐれなハチワレ猫です。
頭抱えながら文章を考えてます。
スイカと芋と肉と魚に、お米とお酒、ブドウが好き。
よろしくお願いします。

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