亀の鏡
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朝。通勤途中、川沿いに自転車を走らせると、川の茂みに何かが光った。僕はその光源に近づいてみた。
「亀?」
それは鏡面の甲羅をもつ亀だった。僕は亀を持ち上げた。
「あ」
六角形の亀甲模様の鏡には少年が写っていた。僕の背後には誰もいない。しかし、この少年に見覚えがあった。そう、友達と絶交した翌日なのに、体育でペアになるから、学校に行かなくちゃいけないとき。僕はこんな顔だった。少年の隣には青年の顔。新入社員で右も左もわからない中、毎日怒鳴られて、同僚にもバカにされたとき。
その隣も、どの隣も、全部僕。
どの僕も泣きそうな顔している。僕はいつでも泣いてるな。
「パパだ」
声に振り返ると、娘が母親と一緒に立っていた。鏡を見ると、全ての僕の隣には家族がいた。
「どうしたの?」
僕はなんでもない、と言い、その亀を川に返した。川に写る僕の顔は、ほんの少し、頬がゆるんでいた。
「亀?」
それは鏡面の甲羅をもつ亀だった。僕は亀を持ち上げた。
「あ」
六角形の亀甲模様の鏡には少年が写っていた。僕の背後には誰もいない。しかし、この少年に見覚えがあった。そう、友達と絶交した翌日なのに、体育でペアになるから、学校に行かなくちゃいけないとき。僕はこんな顔だった。少年の隣には青年の顔。新入社員で右も左もわからない中、毎日怒鳴られて、同僚にもバカにされたとき。
その隣も、どの隣も、全部僕。
どの僕も泣きそうな顔している。僕はいつでも泣いてるな。
「パパだ」
声に振り返ると、娘が母親と一緒に立っていた。鏡を見ると、全ての僕の隣には家族がいた。
「どうしたの?」
僕はなんでもない、と言い、その亀を川に返した。川に写る僕の顔は、ほんの少し、頬がゆるんでいた。
青春
公開:20/02/21 19:44
マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。
100 サクラ
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