おまもり

ドラフト１位指名でプロ野球入りし、これからだという時に白血病と診断された。
目の前が真っ暗になった。俺は一度もマウンドに立つ事なく入院した。
ここから始まるのは長く苦しい闘病生活。ドナーが見つかるかもわからないという暗闇の中で生きて行かなきゃならない。絶望的だ。
そんな俺に無邪気に声をかける子供がいた。甲子園時代から俺のファンだと目を輝かせた。
やめてくれ…そう言いたかった。でも言えない。
その子も白血病で俺より長く入院している。俺からしてみれば明るい君の方がよほど輝いている。
その子からお守りを貰った。またマウンドに立つ日を楽しみにしていると言われた。
その時、俺には運よくドナーが見つかり、何とか回復の兆しを見せていた。
しかし俺をいつも元気付けてくれた子はドナーが見つからず天国に旅立った。

バッターボックスの俺はお守りを意識する。
さあ、今日も天国にまで届くホームランを打ってやるぞ。