タートルネックのセーターがこわいわけ

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 ぼくはタートルネックのセーターがこわい。とくに、伯母さんがくれた藍色のタートルネックのセーターが。ママは、伯母さんに会いに行く時は絶対にこのセーターを着なさいって言う。伯母さんのおうちは海の近くだけど寒いんだ。
「目を閉じて。息をおおきく吸って」
 ママはそう言って僕にセーターをかぶせる。
 去年、同じようにママがぼくにセーターをかぶせて、外側からぐいぐい引っ張っていたとき、ぼくは上を向いたままそっと目を開けてみたんだ。そうしたら全部が藍色だった。遠くにぼんやりと丸い月が見えて、そこから月光が僕の首へ伸びてきた。それは、二本の腕だった。ぼくは首を引っ張り上げられて、苦しくて、首が抜けそうになった。ぼくは両手をバタバタさせたけど、周りには何もなかった。
 ポン! と襟から首が出たら、ママは汗びっしょりで、泣いた後みたいな顔で笑ってた。
 だから僕は、タートルネックのセーターがこわいんだ。
その他
公開:20/02/19 12:21
こわいわけ

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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