おまもり

お爺ちゃんは面白いお守りを持っている。
そのお守り、ボタンを押すと犬の鳴き声が出るんだ。
それが面白くて僕は何度もボタンを押した。お爺ちゃんはニコニコしながらそんな僕を見つめていた。

「坊や、もしも、とても怖い目に遭ったのならこのボタンを押すんじゃ」

とても怖い目って何だろう？不審者に出会った時は防犯ブザーを鳴らしなさいってお母さんにはよく言われるけど、犬の鳴き声の出るボタンなんて持っているのは僕ぐらいだ。
お爺ちゃん、これって何なの？

「儂はな、若い頃は猟師としてよく山に登っていた。そこで出会った山猫軒という洋食屋で世にも恐ろしい目に遭ったんじゃ…もしもあの時、犬の鳴き声がなかったらどうなっていた事やら…ああ…思い出すだけで震えが止まらん…」

そう言ってお爺ちゃんはくしゃくしゃの顔をより一層くしゃくしゃにしました。