カッパのセカンドライフ

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東京開催、セカンドライフ・フェスにて。西粟倉村の案内人が、なりたいものは何ですか?と聞いた。
都会のカッパが言った。
「カッペ」
住む前は都、と思えた東京。もう麻痺したが、通勤だけでも、水が合うとは思えない。
朝の満員電車、カッパを着て乗車する。誰に言われたでなく、空気を読んだ。他の乗客の服を、自分の肌を覆う水滴で、濡らさないためのマナーだ、と言い聞かせて。
案内人が言った。
「西粟倉村は、あなたを、雨の日の、電車の中の傘にさせません」

フェスの一年後。朝。西粟倉村に、都会のカッパはいた。畑でひと仕事を終え、数m先の魚が見える川をスイスイ。水の流れを読むと、自力で進む十倍のスピードを手に入れられる。見事、天然のイワナをキャッチ。キャッチアンドリリースした。
陸にあがる。川にうつった空と自分を見る。改めて驚いた。一年前の自分に言ってやった。
「おい、オマエ。真っ青だぞ」
ファンタジー
公開:20/02/20 18:43
更新:20/02/20 21:29
スクー カッパのセカンドライフ

久保田 人月

よろしくお願いします。
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