伯父のこと

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伯父は売れない画家だった。
父はよく、伯父と幼い僕を寿司屋などに連れて行った。別れ際に必ず、改まって深々と頭を下げる伯父の姿をよく覚えている。
ーーお金がないから、弟である父にあんなに頭を下げないといけないんだ。
伯父の絵は好きだったが、そんな姿は不甲斐ないと子供心に思っていた。
しかしやがて絵が賞を取り話題になると、伯父は忙しくなり、東京に引っ越した。
高三の五月、僕と友人が大学見学のために上京すると、伯父は色々案内しご馳走してくれた。
「ありがとうございました」
「こちらこそ。吉報を待っているよ」
別れ際、伯父は僕らに深々と頭を下げた。
昔、父にしていたように。
ーーお金のあるなしじゃないんだ。
僕は頭をかいた。
「有名なのに、腰の低い人だな。あんな風になりたいね」
友人は言った。
「うん…自慢の伯父さんなんだ」
風が心地よかった。僕たちは新緑の香りを吸い込んで、東京駅へ歩き出した。
その他
公開:20/02/17 08:26
更新:20/02/17 13:51

ガラマイヤ( 日本 )

読んでくださりありがとうございます。
小学生の頃、「世界中の本をぜんぶ読んでしまったら退屈になるから、自分でお話を書けるようになりたいな」と思いました。
僭越ながら、子どもの頃の夢のまま、普段はショートショート作家を目指して、2000字くらいの公募に投稿しています。芽が出るといいな。
ここでは思いついたことをどんどん書いていこうと思います。
皆さまの作品とても楽しく拝読しています。毎日どなたかが更新されていて嬉しいですね。
よろしくお願いしますm(_ _)m
*2020.2〜育児のため更新や返信が遅れておりますが、そんな中でもお読みくださり、コメントくださり本当にありがとうございます!

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