伊予の守り人

22
25

松山空港に降り立って、私は小さく深呼吸をした。初めての一人旅。胸には高揚と、同じくらいの不安があった。
「バス乗り場は向こうぞな」
振り返ると男の人がいた。桜と梅が散りばめられたシャツが華やかな、若々しいおじさんだった。
「ありがとうございます」
頭を下げると、おじさんは「困っとるのが見えたけん」と笑って、松山のおすすめをいろいろと教えてくれた。気がついたらおじさんはいなくなっていたけど、いろいろな場所で迷いそうになるたびどこからともなく現れて、「困っとるのが見えたけん」と笑いながら手を差し伸べてくれた。

最終日、松山城へ登城した。
天守の足元には、紅白の梅が咲いている。
「山城ですから、天守に上れば360°松山を見渡せますよ」
ガイドさんの声に頷き、天守へ向き直る。

――ここから見てくれていたんですね。

紅梅と白梅の間に立って天守を見上げると、笑うように、あたたかな風が吹き抜けた。
その他
公開:20/02/18 19:41
松山の素敵な旅へ 正しい方言をご教示ください…

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容