幻想世界#3 答え合わせ

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僕が小さい頃、周りの大人たちは、しきりにこんなことを言った。「みんな心を持っているのだよ。それを、大切にしないと、いけないよね」
僕は決まってこう応えた。「心なんて、どこにあるっていうの? 見えやしないじゃない」
大人たちは、それでも心はある--普段は見えないけど、ふとした瞬間に、他人や、自分の胸の内に、暖かいものを感じるのだと言う。
「そう、だから……君が僕を"愛してる"と言ってくれた時、ほんの少しだけ期待した。もしかしたら、今度こそ、心に触れられるんじゃないかって」
僕は彼女に、あるいは独り言として、落胆しながら呟いた。とはいえ、これは予想した結果だった。もし本当に、"愛"だなんて心を持っているのなら、きっと"この中"になきゃおかしい。でもいくら探しても、見つからなかった。「君もまた、嘘つきだったんだね」
胸にぽっかり穴を開けた彼女は、ばつが悪いのか。ただ虚ろな瞳を、天井に向けていた。
ホラー
公開:20/02/18 15:07
幻想世界シリーズ サイコパス

柊七十七

WEB小説執筆遍歴: エブリスタ(お休み中)→時空物語(サイト閉鎖)→ショートショートガーデン 現在に至る。

詩と、短編書きです。

#付きタイトル作品
幻想世界シリーズ: ひとつひとつは独立の世界です。日常のふとした思いや、ある日見た印象的な夢など。
ヒトのココロの暗い部分シリーズ: 暗い詩。

#無しタイトル作品
コンテスト参加用。

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