たまねぎ

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長く続いた戦争が煮詰まって、焦げついて、灰になって、風が吹いて、辺りは平らになった。
棒を立てて、布を張って、雨を防いだ。人の目が気になって、周囲を覆う板を探して歩き、戻ると屋根の布は盗まれていて、月のきれいな夜だった。
昔なら天気予報があって、雨を報せてくれたのに、今はそれもなく、誰かの口コミに頼っては濡れたり笑ったり。不便ってすごい。つらいことばかりだけど、人の生きる力に触れて、いつも私はすごいすごいとばかり言っている。独りで。
まだこの国が平和で、陰湿で、競争に忙しい日々を送っていた頃、疲れきった私に、夫はまじないをしてくれた。私の手帳を開き、びっしりと書きこみのあるページに、薄く切ったたまねぎを一枚一枚貼りつけて、子供のように笑った。
「悪戯はやめて」
真顔の私に、
「これでスケジュールがサラサラになるから」
と夫もまた真顔だった。
きっと彼は無事に帰る。私はここでたくましく待つ。
公開:20/02/18 11:03

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