清浄気

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『空気が悪い』って言うけど、うちの会社がそんな感じ。
「ねぇ聞いた?〇✕さんが」
「知ってる。いい気味」
昼休みの食堂。愚痴と陰口の応酬。居ない人を叩いて嗤う。
「あと△△君?ほんっと最悪」
「辞めればいいのに。ね~?」
「あ、はぃ…」
嫌。巻き込まないで。まだ半日なのに、帰りたい。

「オツカレサマデス」
一声で空気が変わる。
研修生の朴(パク)君。彼が来ると静かになる。空気清浄機でも作動したみたい。外国人に気圧されるんだろうけど、私にはありがたい。
「ゴチソウサマデシタ」
3分で退席。何食べてるのか、すごい早食い。
――あれ、顔色悪い?
のそっと立ち上がる背中を追い掛けた。
「あの、朴君」
口を動かしながら振り返る。やっぱり、胃の辺り押さえてる。
「大丈夫?薬飲む?」
「クスリ、ノメマセン」
お節介だった……。戻ろうとしたら、
「ゴチソウサマデシタ」
ごくんと飲み込んで、朴君が笑った。
ファンタジー
公開:20/02/17 22:21

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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