切子飴(きりこあめ)

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「トントコトントン……」
飴を切る心地よい音がする川崎大師の参道で見慣れない幟旗を発見した。
その名も『切子飴』。気になって店の前で立ち止まると
「旦那、江戸と薩摩、どっちにする?」
店主に声を掛けられた。
「オヤジさん、切飴ですよね?」
逆質問すると
「旦那、うちのは歴とした『切子飴』ですぜ! そのへんの切飴と一緒にされたら困るよ」
「切子だから江戸と薩摩?」
「旦那、初めてだったら江戸切子飴でも試してみるかい」
ガラスの切子よりも遥かに小さい飴に、店主は慣れた手つきから俊敏な動きで細工を施していった。
魚子、六角籠目、八角籠目、菊繋ぎ、菊花、麻の葉、矢来、七宝、亀甲ーー江戸切子のさまざまな模様の入った飴が完成した。
「この飴に特殊なスプレーを吹き付けると表面がコーティングされ、ガラスの切子のようになる。ただ、食べられなくなるけれどね」
あまりの美しさと卓越した店主の職人芸に魅了された。
その他
公開:20/02/16 06:19

山田衆三( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育ち、大学時代は京都(御所の近く)、大学院時代は湘南(海ではなく山側)で過ごす。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年06月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。

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