気味

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『空気が美味い』
この表現が、慣用でも譬えでもない時代が到来した。
相次ぐ大気汚染に病原菌の蔓延、森林破壊や地球温暖化に伴う空気組成の変質と慢性的欠乏。地球連合(地連)は全ての国へGDB(国民総呼吸)制限を設け、国は国民へ呼吸税を課した。それでも空気は減り続け汚れ続け、ボンベを金で買わなければ、まともに息が出来なくなった。人類の共有無償資産であった空気は、ついに完全有償化の運びとなったのだ。
国営企業の生産する合成空気を求め、今日もガスマスクの人々が長蛇の列を作る。自分の呼吸を循環させ、ようやく息延びている。困窮の溜息を、青息吐息などと表現するが、その溜息すら節約せねば、五分後の命が危うい。天然の空気はもはや毒ガスに等しく、清浄に戻す事はおろか、シェルターを築いて隔離社会を建設する国力もない。血のにじむ思いで贖ったボンベを装着し、一息ついて『美味い』と感じる。刹那の生きる喜びを味わうのだ。
SF
公開:20/02/15 23:59
更新:20/02/16 00:06
息ている喜び 呼吸のディストピア

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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