猿と檻

6
7

 檻の外側で、俺はあぐらをかいていた。
 鉄格子を隔てた向こうでは、猿どもが笑いながら歩いている。意味のわからない、汚い声を出しながら、足音を無闇にドタドタ鳴らしている。
 俺は睨み付ける。しかし、猿どもはそれに気付かない。
 どんなに自分たちの方が偉いと思っているのだろうか。獣臭さとその傲慢さに顔をしかめるしかない。
 猿どもは俺を指さし、歯をむき出しにして鳴く。バカにしているのだろう。
 ーー奴ら、どっちが外でどっちが内側かもわからないのか。 
 俺を檻に閉じ込めたと思っているらしいが、実際は逆だ。
 どうして食料が減らないのか、食っても食っても補充されるのか、奴らは不思議に思わない。俺が毎日、餌の補充をしていることに、猿どもは気付かない。お山の大将を気取って、自分たちが檻に入っている方だとは考えもしないのだ。
 バカだな、と俺は奴らを見下す。
 ーー今日も、減らない食料を食べながら。
ミステリー・推理
公開:20/02/15 22:58
更新:20/03/18 16:24

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容