気読

空気を読め。などと言われた頃がかつてあったが、実際に読む事が出来る様になると、なかなか苦しいものだ。

『あ～眠い。眠い怠い会社行きたくない』
『満員電車最悪。今すぐ半分降りないかな』
『いっそ事故とかで停まりゃいいのに』
『お、良いＸＸ。今日はあの女子高生……』

あくまで一部である。絶えず空中を埋め尽くす、ろくでもないフキダシの山。ＢＭＩ（ブレインマシーンインターフェース）の技術向上による脳波ＬＩＮＥの普及。誰もがテレパシーを使える社会は、ＩＴバブルにある意味での終止符を打った。氾濫する思考の砂嵐。垂れ流しのフラッシュニュース。読まない努力も一周通過し、壁紙の傍観と化している。

『あいつウゼェ』『もう嫌、誰か助け』『逃がさね』『眠い眠い眠い眠』
『……今日こそ終わり』
この通り。目の前で上げる悲鳴にも無関心。読めないままなら、黙殺の痛みも知らずに済んだものを。

『では、さようなら』