作曲家秀吉

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演奏できない楽譜を書く作曲家がいた。彼は秀吉と名乗っていた。
確かに彼の書く曲はすばらしく、聴衆の魂を揺さぶるものがあったが、コードを無視して音符を重ねるので、弦を抑える指が足りないのだ。
「デジタル社会の申し子だな」
という陰口を叩く同業者もいた。生演奏ができなくても、パソコン上で音符を並べてしまえばどんな曲でも演奏できる。
そうした声が聞こえたころ、ライブ音源が公開された。確かに演奏しているように聞こえるが、物理的に不可能だ。きっと特殊なデジタル処理をしているのに違いない。
その秘密を探ろうと、ある大物作曲家が彼を訪ねた。その作曲家に彼はさも当然のことのように言った。
「豊臣秀吉の指は六本あったという古記録をご存知ですか」
そうして、彼は自分の手を差し出した。
ミステリー・推理
公開:20/02/16 15:36

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