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夜だ。屋台が一つ出ている。
桜には早い土手の、なぜここで? と聞かれても、答えようもなさそうな場所に『おでん(二人羽織します)』と書かれた赤い提灯が揺れていた。
見ると、「お」「 」「で」「 」「ん」の暖簾の下の粗末な長椅子の真ん中で、朱に黄色の格子柄の半纏が浮いて(?)おり、両袖からはすらりとした女の指が、きちんと揃っている。
「おやじ。冷で頼む」
「へえ。それで、二人羽織の方は?」
「いくらだ?」
「おでん一皿付4600円税抜きで」
半纏が擦り寄ってきて、俺の手に女の手が重なった。冷たい手だ。
「あんたの女房じゃねぇのかい?」
「め、めっそうもねえ」
俺は冷をぐいと煽った。
「じゃ熱いとこ、見繕ってもらおうか」
「へえ。じゃ二人羽織の方も?」
ふわりと半纏が広がる。ハラハラと桜が散る。
「今日はよしとくよ」
「へい」
俺は女の手を撫でながら熱燗をのみ、大根にかぶりついた。
桜には早い土手の、なぜここで? と聞かれても、答えようもなさそうな場所に『おでん(二人羽織します)』と書かれた赤い提灯が揺れていた。
見ると、「お」「 」「で」「 」「ん」の暖簾の下の粗末な長椅子の真ん中で、朱に黄色の格子柄の半纏が浮いて(?)おり、両袖からはすらりとした女の指が、きちんと揃っている。
「おやじ。冷で頼む」
「へえ。それで、二人羽織の方は?」
「いくらだ?」
「おでん一皿付4600円税抜きで」
半纏が擦り寄ってきて、俺の手に女の手が重なった。冷たい手だ。
「あんたの女房じゃねぇのかい?」
「め、めっそうもねえ」
俺は冷をぐいと煽った。
「じゃ熱いとこ、見繕ってもらおうか」
「へえ。じゃ二人羽織の方も?」
ふわりと半纏が広がる。ハラハラと桜が散る。
「今日はよしとくよ」
「へい」
俺は女の手を撫でながら熱燗をのみ、大根にかぶりついた。
その他
公開:20/02/14 15:45
更新:20/02/14 15:59
更新:20/02/14 15:59
たうこさんによる
写真ACからの写真
新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。
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