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「病める時も、健やかなる時も…愛することを誓いますか?」
新郎は緊張した面持ちで、「誓います」と答えた。続いて新婦も問われ、同じように答える。
白バラやアイビーがふんだんに飾られたチャペル。何組ものカップルの門出を祝福してきただろうこの場所で、二人も新たな人生の一歩を踏み出す。
「では、誓いのキスを」
新郎はベールを持ち上げ、そっと口づける。お互いマスクをしたまま、ごわごわした感触が触れるか触れないかのキス。モニターの向こうで微笑む神父、流れる賛美歌。二人きりの、他に誰もいないチャペル。
本当は身内や友人をたくさん招き、盛大に行うはずだった。先月から、空気感染するゾンビウイルス『X』が大流行し始めなければ。人々は、なるべく家やシェルターから出ないようになっていた。
「Xの流行がおさまったら、新婚旅行に行こうね」
新郎はそう囁いた。新婦は頷き、手袋で隠した、腐りかけの右手を新郎に預けた。
ホラー
公開:20/02/14 05:55

ガラマイヤ( 日本 )

読んでくださりありがとうございます。
小学生の頃、「世界中の本をぜんぶ読んでしまったら退屈になるから、自分でお話を書けるようになりたいな」と思いました。
僭越ながら、子どもの頃の夢のまま、普段はショートショート作家を目指して、2000字くらいの公募に投稿しています。芽が出るといいな。
ここでは思いついたことをどんどん書いていこうと思います。
皆さまの作品とても楽しく拝読しています。毎日どなたかが更新されていて嬉しいですね。
よろしくお願いしますm(_ _)m
*2020.2〜育児のため更新や返信が遅れておりますが、そんな中でもお読みくださり、コメントくださり本当にありがとうございます!

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