一生懸命

　尖ったスコップの先端が、地面に鋭く突き刺さる。
　全身から滴り落ちる汗など構いもせず、貴方は土を掘り起こしている。そんな貴方を、わたしは車を背もたれにし、眺めていた。セミ達の鳴き声を他所に、ただじっくりと、貴方が事を成し遂げるまで。
　そういえばわたし、見たことなかったわ。貴方がそんなに必死になっている姿、貴方と出会ってからいままで一度も。そんな必死な自分の姿をわたしに見せたくなくて、いままで隠していたのかしら？こんな人気のない山奥に来てようやく、本来の姿を見せてくれたのね。
　それにしてもわたし、風邪でもひいたのかしら？テレビのニュースじゃ今日の最高気温は三十五度のはずなのに、寒くて手足が硬直してる。
　
　貴方はスコップを地面に置いた。終わったのね。出来たのね。これから、わたしを埋める穴が。