よそゆきのチョコバナナ

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幼い頃、月に一度、祖母に連れられデパートへ行った。
デパートの屋上には飲食スペースがあり、そこで食べるチョコバナナを私は楽しみにしていた。
祖母は決まって、お店の人に出来立てをお願いして、作っている所を見せてくれた。
串に刺さったバナナを、ほんのり温かいチョコレートの中にダイブ。
祖母はこれを「チョコレートの温泉」と言っていた。私はこの言葉が妙に好きで、その響きに憧れを抱いたものだ。
出来立てはチョコレートが垂れてきてしまうので、食べる前には必ず、洋服が汚れないようハンカチを二枚取り出し、一枚はスタイとして首もとにかけ、もう一枚を膝の上に乗せてくれた。
ポタポタ落ちるチョコレートを受け止めてながら、祖母は手を添え私に食べさせてくれるのだが、最後に祖母の手に落ちたチョコレートを舐めるのがお決まりで、少ししょっぱかった。

大人になって、久しぶりに食べたチョコバナナも、少ししょっぱかった。
その他
公開:20/02/13 19:35
更新:20/02/22 20:55

各地禍根( 東京 )

恥の多い人生でございます

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