デジタルを泳ぐ

写真が全てデジタルデータとして扱われるようになって数十年。事件は起こった。
全世界のデジタルデータを保管しているクラウドに、ハッカーによってコンピューターウイルスが送り込まれた。
被害を最も受けたのがデジタル写真だった。データはほとんど消失。残っていても損傷が激しい。
僕はそのデータを修復する仕事をしている。
まず、USBに僕の精神の一部を移す。
あらかじめ頭の中に埋め込んでいたマイクロチップ。これに、脳内の電流が定期的に流れるようにしておく。すると精神の一部(正確には思考回路の一部)がマイクロチップに構築される。それをUSBに移動させるのだ。
あとは簡単。それを専用のコンピューターに接続してもらい、目的のデータを探す。

デジタル世界は様々な写真が流れていく。その中を泳いでいく。
大量のデータの海を進む。

たすけて

声がした。きっと依頼されているデータからの声。

今、助けてやる。