春雷

長雨がようやく止み、サヨコさんは洗濯物を干していました。

ピカッ！ゴロゴロドッシーン！
突然何かが庭に落ちてきました。
驚いてそちらを見ると、大きなかみなり様が慌てて立ち上がるところでした。泥だらけのパンツを見て困り顔のかみなり様にサヨコさんは言いました。
「ちょっと待ってて。」
急いで家に入り、持ってきた物を渡します。
「これに履き替えて。ちょっとデザインは違うけどトラ柄には変わりないから我慢してね。」
それは買ったばかりのダンナさんのご贔屓球団のパンツでした。
かみなり様は頭を下げて空に戻って行きました。

翌朝サヨコさんが外に出ますと、そこには新しいトラのパンツと小さなでんでん太鼓が置かれていました。
「暖冬の影響か例年より早い春雷が…」
つけっぱなしのテレビからはそんなニュースが流れていました。
「おーい、俺のパンツどこ？」
ふふっと笑うサヨコさんに春には赤ちゃんが生まれます。