フォロアーの男

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 その男とは初対面だった。
「娘さんとは結婚の約束をしていました」
 男は膨大な数の娘の画像を次々と見せながら思い出を語った。画像に男は写っておらず、娘の顔は遺影とは少し違っていが、私たち夫婦は男が話す娘の生き生きとした記憶に縋った。
 その日から、男は毎日、家事をし、娘とのことを語ってくれた。
「妹のようにかわいがっていました」
 男は私たちを実の親のように世話をしてくれ、生活費も入れてくれるようになった。
 しかし、死んだ娘と結婚することはできない。ならばと、男は養子になることを望み、私たちは受け入れた。
 以来、妻が変わった。
 若い男がいるだけで、これほど美しくなるものだろうか。私は男に嫉妬するようになった。
「若い男がそんなにいいのか。娘が愛した男が」
 何十年ぶりかに激しく滾った私を、妻は受け入れてくれた。そして、妻は懐妊した。
「僕に妹ができますね」
 男はそう言って笑った。
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公開:20/02/12 10:15
シリーズ「の男」

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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