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三日坊主も、させてくれない日記がある。
翌日に見直さないと、書いた内容が消えてしまうのだ。書いた痕跡すら残らない「掛け捨て日記」とは、コイツの事だ。
この日記の購入者、Aがいる。一週間前「三十頁の企画書、手書きで提出!と部長。鬼」と日記に書いた。それから一週間、毎日、企画書の書き直しをさせられている。毎日、グチを日記に書いた。が、日記を見直さない。わざと内容を消しているのだろう。
さて、ここは会社。Aは今朝を迎えた。部長まで歩く一mが長い。
その間、巻き添えを恐れる同僚達の視線が大声で叫ぶ。
「頼む。その仕事は、どうかお前だけで」
Aは心で呟く。
(字が汚い汚いと言われ、一週間。どうか日記様…)
部長が企画書を見た。怖い顔をする…。しかし無言で、それを鞄に入れた。
一斉に同僚からの、無数の「祝」の文字が宙に流れた。
ドヤ顔のA。掛け捨て日記は、内容が消えれば消えるだけ、字から汚さが消える。
その他
公開:20/02/13 18:02
スクー 掛け捨て日記

久保田 人月

よろしくお願いします。
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