洗い観音

巣鴨の高岩寺、洗い観音が佇んでいる
これは水をかけ、自分の悪いところを洗うと治るというもの
能力は本物だった

というのも、サッカーの日本代表に選ばれたのだ

代表ユニを着てベンチに座る洗い観音は、不動のメンバーとなった
試合に出ることはないが、味方が怪我すると担架に乗せてピッチに運ばれる
怪我した選手も、なんとか自力で水をかけ、観音をタオルでこすると、ケロッと蘇る

怒ったのは毎日参拝に来てたご老人だ
代表戦があると観音様がいないのだ
彼らは作戦を立てた

そして次の代表戦、客席は老人で埋め尽くされた
響き渡る「怪我しろ」の声
そして選手の１人がうずくまり洗い観音が出動すると、客席からピッチに老人が流れ込んだ
その中のひとりが私の祖母だ

しかし彼女の目的は違った
どさくさに紛れてドリブルし、得点をあげた
これは「ドーハの悲劇」ならぬ「老婆の奇跡」として日本サッカー史に刻まれている